なべ家の事件簿

母のご機嫌がすこぶる悪い日が続いた。


やはり、当然のように事件が勃発した。


牙を向けてくる度に


父が亡くなったばかりで精神的に落ちてるんだろう。受け止めなければ・・と


が、今回ばかりは


あっかん!!


私もどうにかなってまう。


しっかり向き合ってしんどい自分の気持ちを伝えなければ、と思い立つ。






「ちょっといい?  今日の〇〇の件でこういう言い方してきたけど

その言い方が続くのであれば私正直しんどい。以前はそんな言い方しんかったやん。

どうしてまったの?

父が死んで凹んでいるのは分かるけど支えあって生きてかなあかんやん。

父のためにも。

もしかしたらそのイライラの原因は

脳梗塞の後遺症も考えられるよ。 心配やで一回検査しに行かへん?」






向き合って座り穏やかな口調を心掛けゆっくり話す。






『・・・お母さんね。 自分でも分かっとる。 イライラしとるのが。

おじいが原因じゃない。仕事場で最近嫌なことが続いてね(介護職をやっている)

明らかに転倒するかもしれん利用者さんが

コールを鳴らしとるでフロアで書き物をしとるお母さんが

書き物なんか後にして行かなあかんと思って 急いて行くと案の定 転倒寸前やった。

そしたら職員さんに「フロアから離れないでって言ったじゃないですか!!行かなくてい

いんです!」って怒られてね。 でも転倒防げたやんやよ。 他に誰も行かへんもん。

いつもそう。 ずっと鳴ってても いつも固まって笑ってしゃべっとる人は同じ人。

もう腹が立って。 それで転んだら寝たきりになるかもしれんのに。

役割があるのかもしれんけど何で笑ってしゃべっとる人にあんな勢いで怒られ

なあかんのか情けなくなってね。

コールが鳴っても行かん人は行かんからね。 上手に知らん顔する。

オムツの段ボールも男の人が運ぶような重い物もお母さんや高齢の○○さん(女性)が時

間かかって何往復もして運ぶんやよ。

誰ひとりとしてご苦労さんなんて言ってくれたことなんかないよ。

仕事やでしょうがないのかもしれんけど。

年寄りなんて単純やで言葉一つで頑張れるんやけどね。

自分の半分にもいかん若い子に怒鳴られると

残り少ない人生こんな思いしていかなあかんと思うと情けなくなってね。

何も言わずにお母さんのように辞めてく人が殆どやと思うよ。

縁がなかっただけでは済まされん。

上の人が改善してあげなあかん場合があるでね。

あんたも部下がおるんやでちゃんと見てあげなあかんよ。

世の中は役に立たん年寄りには冷たいもんやとは思うけども。

体はガタがきとるであちこち痛いし

配慮したらなあかんよ』





溢れだすように溜まっていた鬱憤を私に向けて一気に話し出す。





「辞めればいいやん。体壊したら元も子もないよ」

『分かった。ありがとう』



いろんなことが頭を巡ったが


最初に出た言葉は “仕事” からのアドバイスではなく “家族” からくる思いだった。


これが自分でも以外だった。


ずっと家族には 仕事を優先する発言ばかりしてきた。


父と向き合えなかった思いが消化できずにいた。


家に帰っても父や母に当たることもあった。


ゆっくり話を聞いてあげられず


ただただ逃げるように早くベットに入りたかった。




家族がいて仕事ができた。


たとえ遠くにいても


会う時間が短くても


どこかに家族がいるから仕事が楽しめた。


そんな当たり前のありがたさに 全く気付かずにいた。


今にして思えば


家族を大切にできない人が 他人様など指導できる訳がなかった。





父が教えてくれた。





次の日から 別人になっていた母。



数日後



『きっぱり辞めます!と言ってきたよ』



以前から辞めさせてもらいたいと伝えていところ 引き止められていたらしく



『お母さん上の人にはよう言わんで。それなら辞めるしかないもんね』

「そっか。ゆっくりしやあ。もう働かんでもいいやん」

『あっかん!家におったら退屈。体が動く内は働きたい。おじいのこと考えてまうし』

「分かった。自分がしたいようにすればいいよ」



職員の何気ない言葉で


母が人生を変えようとしている。


私の行い、または 行なわない行動 によって


スタッフさんの人生に影響を与えてしまうことがある、と。


現に今までもあったと思う。


母の体験から改めて気付かされた。





気を付けよう。


そんな言葉では追い付けないものかもしれないが。























コメント

匿名 さんのコメント…
お疲れ様です。
私も同じ状況を体験しています。
そこなんですよね。いかにご利用者様を安全に介護できるか、また、職員間がいかに気持ちよく働けるか。
お母様も大変悩まれた末の結論だったのでしょう。
声かけ1つで全てが上手くいくのにー、と思います。
職場では「いち職員」としては皆同じ。ご利用者様の安全のためにも、円滑に仕事ができるようお互い気をつけていきたいものです。
匿名 さんのコメント…
おつかれさまです。

このブログを読んで、涙が溢れました。
子としてですが同じような思い、行動をした事があるからです。

言葉1つで頑張れたり、言葉1つで傷ついたりもする。
誰かの心やその後の生き方に影響をあたえる事もある。

今日。改めて気づけたことに感謝です。
あけみ さんの投稿…
気持ち良く働ける職場とは、どんな職場だろう。気持ちの良い職場の環境とは、どんな環境だろう。
思うことは、同じ志しを持っている人の集まりだと、気持ち良く、良い環境なのではないかということ。
言葉掛けだけでは作っていけないけど、言葉掛けで変わっていけると思います。
生活相談員 國枝 さんの投稿…
私たちのお仕事は職種でいうとサービス業に入るのではないでしょうか。第一にはご利用者様の事を考えなければいけません。そして、命を預かるとても重要な仕事でもあります。とっさの判断で事故になる場合も、また防げる場合もあります。お母様の職場の方、仕事の重みと責任感とプロ意識にかけてしまっているのだと思います。残念で恥ずかしいですね。
そして、家族としっかりと向き合い話し合いが出来る。これはとても難しい事だと思います。一番近くに居る大切な人だから、本音を話せなかったり八つ当たりをしてしまったり。でも、とても大切なことですよね。
私は家族と向き合ってしっかりと話せる自信がありません・・・"(-""-)"
介護職員 べーさん さんの投稿…
お母様も同じお仕事をされていたのですね…決断されることでストレスがなくなり気持ちが楽になられ本当によかったと思いました。そしてしっかり向き合って話をする事が出来るなべさんはすごいと思います!
匿名 さんのコメント…
向き合う事、相手に寄り添う事、傾聴すること。大切ですね。

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