笑顔が救うもの




24時間灰色の壁を見つめている父




先日はたいそう表情が緩んでいた

「渡辺さーん!痰取りましょうか?OK~?」




私にも見せたことがない くしゃくしゃな笑顔で頷く父

気管切開したため言葉が話せず




しかし今日はというと

険しい表情で天井を見つめている




「あっ・・どうも」看護師さんが入ってきた

淡々と声がけなく痰吸引を始める看護師さん




人の気持ちを察すのに長けていた父

今日の表情の理由が分かった気がした




出ていく時はまさかの無言・・・😱

そりゃーないよ看護師さん




24時間同じ色、臭いに囲まれ過ごしている患者さんたち

入れ替わり立ち替わりやってくる看護師さん




あの看護師は苦手  あの看護師は怖い  拒否することも逃げることもできない

同じ場所にい続けなければならない患者さんたち



病院    施設  避難所 今そこにいるしか術がない人たちにとって

逃げ場所がある人たちの

ほんの少しの思いやりで灰色の壁に色を添えられるのに




笑顔一つで



今日という人生が救われるのに



そんな容易いこと



そんな簡単なこと





体位交換しようと膝を少し動かしただけでも顔をしかめて痛がった




先ほどの看護師さんがちょうど入ってきた
膝にシップを貼ってもよいか確認する




「かぶれるので貼らない方がいいですよ」

(・・・試したことないじゃん)




そんなことで引き下がる私ではなく

(だったら聞くなと突っ込まれそうですが 笑)




ダメダメ家族の私は両膝にこっそり貼って帰る

(だってかぶれたことなんて40年ないですもん)



逃げ場のある人が

逃げ場のない人にする

無関心という名の暴力

逃げ場のない人にとっては

死を宣告されているのと同じ




愛の反対語は 憎しみ ではなく

無関心  何かで知った




「渡辺さーん!痰大丈夫~?」

笑顔で敬礼しながら入ってきた看護師さんに 膝に貼ったシップのこと

来た時に貼り替えていくことを報告した

「あっ、はい!ここを触ると特に痛がられますね。大丈夫です。お願いします!(笑顔を添えて)」





ご利用者様の長い人生の中、介護職員が関わる時間はほんの一瞬



けれど紛れもなく今その方の「人生」の中に登場し関わっている




もしかしたら家族よりも
その方が築かれてきた多くの友人よりも
今を知っているのかもしれない




私が行ってもなかなか視線を合わせず天井を見つめている父




笑顔が素敵な看護師さんには見たことがない満面の笑みを浮かべる父



(なんじゃそりゃ)



看護師さんは  今の父のことを 私より知ってるんだろう



今 父が頼りにしているのは 私ではなくコールを押したら直ぐに駆けつけて笑顔を向けてくれる看護師さんなのかも




それでいい




私の知らない父と看護師さんの時間(人生)があるのだから

















コメント

ピチピチの60代 さんの投稿…
笑顔の素敵なスタッフでありたい
あけみ さんの投稿…
私も笑顔を、何よりも心がけています。笑顔を見せてもらえる、スタッフでいたいですね。
介護職員 べーさん さんの投稿…
とても心打たれるブログをありがとうございます。お父様が笑顔を見せられる看護師さんがいつもお部屋に来て下さいますように…
匿名 さんのコメント…
笑顔と、思いやりのある声かけ一つで、喀痰吸引の苦痛も和らぐのに・・・。
私も、病院で父の喀痰吸引をしていた頃を思い出しました。
今研修で、医療的ケアも勉強しているので、心に響くブログでした。
介護主任 ゆきみ さんの投稿…
家族に見せる事のない笑顔。
そんな笑顔にできる看護師・介護士になれるよう心掛けたいですね。
匿名 さんのコメント…
その時その時のご利用者様と過ごす時間大切にしたいです
生活相談員 國枝 さんの投稿…
忙しいと、ついご利用者様から話しかけられてもしっかりと立ち止まって向き合って対応が出来なくて、後から反省や後悔をする事がよくあります。
自分は何十人の方のご予定を管理して、何人ものケアマネージャーさんへの対応をしていようと、その方はその瞬間、私一人に話しかけてくれているんですよね。
もしかしたら、明日は話す事が出来ないかもしれない。そんな可能性だってあります。
ご利用者様と関わる時間を大切にして、たくさんの笑顔を引き出せるよう頑張ろうと思います。

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